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最高裁判所第三小法廷 平成5年(あ)19号 決定 1996年3月19日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人吉田孝美、同岡村正淳、同古田邦夫の上告趣意は、憲法一三条、二二条一項、三一条違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、所論にかんがみ、職権により判断すると、大分県知事は、「いわし、あじ又はさばの採捕を目的とするものに限る。」との限定を付して中型まき網漁業の許可を申請すべき期間を定めた昭和六〇年七月一六日付け大分県告示第九一七号を発し、これに応じて同年九月二七日付けで「漁獲物の種類」欄に「いわし・あじ・さば」と記載して右許可を申請した被告人甲野太郎に対し、同年一〇月二九日付けで中型まき網漁業を許可したものであって、同被告人に交付された中型まき網漁業許可証の「漁業種類」欄にも「いわし・あじ・さばまき網漁業」と明示されていたというのであるから、漁業法六六条一項、六五条一項による大分県知事の右中型まき網漁業許可は、いわし、あじ、さばを目的として採捕することに限定されたものであって、それ以外の魚種を目的として採捕することは禁止されていたと解すべきである。したがって、右許可外の魚種であるいさきを目的として採捕した被告人らの行為は、許可の内容である魚種等により区分された漁業種類に違反する操業を禁止した大分県漁業調整規則一五条に違反することが明らかであり、これと同旨の原判断は正当である。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 大野正男 裁判官 園部逸夫 裁判官 可部恒雄 裁判官 千種秀夫 裁判官 尾崎行信)

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